新木場で仕事の用を済ませて駅に向かって歩いてたら、木材・合板博物館という看板が見えて、お、こんなところに?と時間があったのでちょっと寄り道。
10階建くらいの立派なガラス張りのビルの入口から入っていくと、いきなりロビーの吹き抜けには小型ヨットが!
1962年に海洋冒険家の堀江謙一さんが日本人として初めて単独太平洋横断したときの「マーメイド号」のレプリカでした。
こんなところに?と思ったけど、ラワン合板で作られているので、その由来で展示されているようです。レプリカとはいえヨット乗りにはうれしい展示。
(実際に太平洋を横断したMermaid号はSan Francisco Maritime National Historical Parkの博物館に展示されています)
堀江さんはいまさら説明するまでもないほどの人ですが、1962年に太平洋を無寄港で横断したあとも何度も太平洋を横断したり縦断したりと10回も超長距離の航海を成功させています。その彼が最初の太平洋横断に使ったのがこの初代マーメイド号。

<MERMAID号>
全長:5.83m(19フィート)
水線長:5.03m
幅:2.00m
船型:スループ
設計/デザイン:横山晃
建造所:兵庫県姫路市の1918年創業のオクムラボート
19フィート、全長はもちろんアルバトロッサーより小さい。。
こんなフネで太平洋に乗り出して行った勇気には恐れ入ります。
マストも含めてすべて木製。

マスト根元は四角い断面で上に行くにつれて楕円断面になってました。
マストは起倒式になっているのがわかります。

レプリカとはいえ艤装のディテールまで再現されています。
これはセルフタッキングジブ(タックのたびにジブシートの操作が不要になるシステム)のレールですね。ちょっと細すぎてたわんでしまって心許ない気もしますが、これで嵐にも耐えたのだからすごい。

これはジブシートブロック用のトラック。
これも想像よりはだいぶ華奢。言い方は失礼かもしれないですがそのへんのホームセンターで売っているようなごくフツーのL字断面の金具です。

コックピット。
完全にフラットなのでどこも掴まるところがないし、こんなにツルツルしてたら海が荒れて揉まれたら簡単にすべって落水しそうで怖い。
舷側を取り囲むスタンションとかライフラインはなかったのかな。
ブームの高さもディンギー並みに低いです。

キャビンに降りていくコンパニオンウェイ。
中もどうなってるか見てみたいですね。

レプリカということで喫水下は省略されてたけど、どんなキールがついてたんだろう。

博物館自体は平日でほとんどお客さんがいないような感じだったけど、このロビーのマーメイド号はヨット乗りには見応えあります。(無料でふらっと入ってみれます)
そして後日いろいろ調べていくと、当時はヨットによる日本出国は前例がなく、太平洋横断目的でのパスポート取得ができなくてパスポートを持たないまま出航したようです(!)。当人はアメリカに到達しても、密入国となるため強制送還されることを覚悟して出発した、というかなり破天荒な冒険。
おもしろいのは、この行為に対する日米の当局の反応が全く逆だったこと。
彼がサンフランシスコに到着したとの連絡を受けた大阪海上保安監部は、「アメリカからはすぐ不法出国者として強制送還され、日本に着くと直ぐ捕まえられることになる」と談話を発表、大阪入管事務所は「小型ヨットは一般旅客とみなされるので当然ビザが必要になる。たとえ申請があっても許可しないのは常識」との反応。
対してサンフランシスコ市長は、「かつてはコロンブスもアメリカ大陸に来た時にパスポートは持っていなかった」と、尊敬の念をもって堀江さんを名誉市民として受け入れ、特別措置として1か月間のアメリカ滞在を認めました。
アメリカでの対応が日本でも報じられたところ、日本のマスコミや国民は手のひらを返すように、堀江の“偉業”を称えるものに変化したと。。
帰国した堀江さんも密出国について当局の事情聴取を受けたけど、結局起訴猶予。
アメリカの冒険者に対するリスペクト精神や異人種や異端者を受け入れるような懐の深さが感じられるエピソードです。
そして何よりも個人的にはマーメイドを設計した横山晃さんは、私のアルバトロッサー26を設計した横山 一郎さんのお父さん、というのも縁を感じてしまいました。
最後に帆走するマーメイド号。
かなり小さなジブが付いていますね。

(画像は毎日新聞のサイトからお借りしました)
木材・合板博物館
東京都江東区新木場1-7-22 新木場タワー3F
www.woodmuseum.jp